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「表と裏」の法律知識】#4
今月8日から9日にかけて千葉県に重大な被害を及ぼした台風15号今もかなり広い範囲で停電や断水が生じています。また建物の倒壊などの被害の実態が徐々に明らかになってきています。
今回の台風被害で注目されているのが、市原市のゴルフ練習場のポールが倒壊し、隣地の家屋が潰れ、また20代女性がケガを負ったというニュースです。
このような倒壊事故などが起きた場合、被害に遭った方々はゴルフ場に賠償を求められるのでしょうか。
まずゴルフ場のポールのように土地に接着して人工的に造られた物を「土地の工作物」といいます。家の屋根瓦や塀も「土地の工作物」にあたります。この「土地の工作物」が今回のように台風で倒れ、また飛ばされるなどして、人のケガや物の損壊を生じさせた場合、「土地の工作物」の管理者や所有者が、被害者に賠償をしなければなりません。
ただし、管理者らが責任を負うのは、「土地の工作物」の設置・保存方法に「瑕疵」があるような場合。すなわち本来備えているべき安全性が欠けているような場合に限られます。管理者らがちゃんと設置・管理していたが、台風が想定外の規模であったために倒壊したような場合は、管理者らは責任を負いません。
今回ポールが倒れた原因が、もっぱら柱の腐敗やゴルフ場の防風対策不足にあるのであれば、被害者の方々はゴルフ場に対して損害賠償を求められます。
一方、ゴルフ場のポールの管理に問題がなく、もっぱら観測史上最大といわれる突風などが原因の避けられない事故だったのであれば、ゴルフ場は責任を負わないことになります。
被害規模が相当大きいので、賠償義務があるかどうかが争われる裁判になる可能性もあると思います。
(髙橋裕樹/弁護士)